2020年8月16日日曜日

ワクチンのことから「種痘について」

 WHO の 記事「天然痘ワクチン」についてを読んだ。

ジェンナーと種痘のことをだいたいは覚えていても、その世界で初めて成功したワクチンが1796年だったというのはぼーっと生きてきたせいかぼやけてた。

そうか、1796年だったか。

この間から読んでいたヴォルテールの『哲学書簡』1734年発行の原題: ` LETTERS PHILOSOPHIQUES' の 第11信に「種痘について」があって、この新型コロナ COVID-19 のワクチンが話題になっている最中なのでじっくりと読ませてもらった。翻訳はすごくわかりやすかった。

ヴォルテールは、むずかしいことを面白いたとえ話を挿入しながら読者を惹きつけるのがとても上手だ、それはニュートンやデカルトの微分や幾何学の話しで十分に堪能できた。それはまた別の機会にして、種痘のはなし。

で、この第11信は、ヨーロッパのキリスト教の国々では、イギリス人は頭が変だ、という導入で種痘の話がはじまる。

ちょっと頭が変だと言われたイギリス人はそれに反論している箇所を、引用する。

「 ほか の ヨーロッパ 人 は 臆病 で、 ひとで なし だ。 臆病 だ という のは、 自分 の 子ども に ほんの 少し だけ 痛い 思い をさ せる のを 恐れる から。 ひとで なし だ という のは、 自分 の 子ども が いつか 天然痘 に かかっ て 死ぬ かも しれ ない のに、 子ども を その 病気 の 危険 に さらし て いる から だ」

ヴォルテール. 哲学書簡 (光文社古典新訳文庫) (Kindle Locations 896-899). 光文社. Kindle Edition. 


 ヴォルテールによると、イギリス人で天然痘をわが子に植えつけた最初の有名人はウォートレー・モンタギュー夫人(1689 - 1762)でこのエピソードでは、夫の大使とともにコンスタンチノープルにいたとき、そこでわが子に天然痘を植えつけるという異教徒の習俗にしたがった実験を行ない成功したという。

この異教徒の習俗は、コーカサス地方ではじまったらしいが、ヴォルテールはアラブ人からかもしれないとも書いている。

いや、なかなか生後半年の子どもの腕に傷をつけて、そこにほかの子どもの膿を植えつけるという行為は大胆で勇気がいることだが、そこから種痘がはじまったということは人類の危機が目の前に迫っていたからこそやったことだろう。

冒頭のWHOの記事にある専門用語:

Variola Virus    天然痘ウイルス

Inoculation        接種


上の Inoculation のところに、コーカサス、中国、アラブなどでの接種の歴史がくわしい。





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